日本経済新聞2005年8月4日夕刊 の記事より

朝日新聞2005年8月6日朝刊 の記事より

<Letter from Yochomachi > 名言(迷言)集
余丁町散人(橋本尚幸)の隠居小屋
「料理は腕で作るのではなく、頭で作るもの」(村上信夫)
きょうの朝日新聞「天声人語」からの孫引き
2日に亡くなられた元帝国ホテル総料理長村上信夫氏の言葉だそうだ
天声人語は「料理をすると脳が鍛えられる」という説を紹介しているが
その通りだと思う。朝日新聞もたまはいいことを言う
散人流に考えるに、料理をするということは
毎日「クリティカル・パス」の計算を頭の中で繰り返すことだと思う
必ず複数の作業があり、一つ一つの作業がそれぞれに前後関係で別の作業と結びついている。
いくら一つの作業だけを急いでも、全体の工期短縮にはつながらない
まるでプロジェクト・マネージメントそのもの
どの作業が「クリティカル」かを瞬時に計算し、それを優先し
待ち時間を最小限にして全体の効率を上げる。なかなかたいへんな頭脳労働だ
料理は、味ばかりじゃない。手早く作ると言うことも「芸術」なのである
ボケ防止には料理がお奨めだと思うが、どうでしょうね

元帝国ホテル料理長・村上信夫の料理ノートから
(株)オータバブリケーションズ・月刊ザ・ホテル別冊
村上ムッシュはいつもニコニコしている
「興奮すると味がわからなくなるから」とか
「お客様に接する人間はとがっていてはだめですから」とおっしゃる
ムッシュは体だけではなく、こころもまあるく広い

「私、いい師匠や先輩に恵まれて 、いろいろなことを教えてもらいました
でも、まだまだ勉強です。死ぬまで調べたいことたくさんあります」
といいながら、その知識を惜しみなく話して下さる
いつの間にか、ナポレオンやジョセフィーヌが身近な人になっている
おいしいフランス料理を食べた後の満足感を味わっている

村上信夫ムッシュが天に召されました

我々料理人、飲食業界のみならず
一般の方々にも親しみ愛された
村上信夫ムッシュが
8月2日、天国に召されました

7月30日 村上ムッシュの84才の誕生パーティーを
グランドアーク半蔵門で催されました
私も発起人の一人として企画・参加しました
その3日後に村上ムッシュはお亡くなりになりました

ウィスキーの水割りをかなり召し上がり
とてもお元気で、上機嫌でした
誕生パーティーに出席の方々は
いまだに信じられないことでしょう

村上ムッシュの84才の誕生日パーティーでの
お元気な姿を みなさまにご披露します

村上信夫ムッシュの大事にされたお言葉
「人生に、もうはない、まだまだ」
「美味しい料理の極意は、愛情と真心です」
「食卓は、友情の仲介者である」
「料理の上達は、身体と頭を使うこと」

 

村上ムッシュとの最後の写真です
幼い頃にご両親を亡くされ 12才で料理の道に入られ
戦争に行かれ、シベリアに2年抑留され
友の死を乗り越えて、帰国してから
帝国ホテルに復帰して、フランスに修行され

東京オリンピックの選手村の料理で大活躍され
日本の料理のレベルの高さを世界に知らしめ
帝国ホテルにとって、料理業界にとっても
なくてはならない人でした

私と村上ムッシュの出会いは19才の時でした
若い私に丁寧に料理人の心得と修行について語られ
一流の料理人になるために、私に三つの約束を
実行するよう言われました

●毎日、料理書・新聞を読んで料理と社会のことを学べ
優れた料理人であることと同時に立派な社会人になれ

●料理人として、プロ意識を
高めるために節制しろと
タバコは吸うな、常に体調をベストにして料理を作れ
料理人は清潔であれ、髪の毛は短く切れ、無精ひげはダメ
料理場では必ずコック帽をかぶりなさい

●料理人の師匠はシェフだが、シェフになったら
お客様が師匠だ、お客様が自分たちを育てて下さる
だから、常に謙虚に感謝してお迎えしなさい

村上ムッシュと厨房を歩いたとき 、若いスタッフや
パートの女性に対して、先にご自分から挨拶されます
「おはようございます」「ごくろうさまです」と
そして、手を差し出して握手をされます
厨房が一つの輪になり、大きく盛り上がります
エレベーターに乗るときはドアを止めて最後に乗られ
降りるときはドアを止めて最後に降りられます
肩書きに関係なく、どなたにもされます
「実るほど頭がたれる稲穂かな」を実践された方です

私は料理人としても人間としても尊敬できるムッシュに
出会えて、ともに「シェ・ムラ」を立ち上げて
今日までつき合わせて頂いたことを、感謝しつつ
生涯の師として、少しでも近づけたらと
これからの人生を精進したいと念じます

村上ムッシュはおいしい料理を誉めるとき
親指と人差し指を丸めて「ボン!」「ウマイスネ!」と
満面の笑みを浮かべて、おっしゃいます。
天国でゆっくり大好きなお酒を召し上がりながら
おいしい料理を召し上がり下さい
朝日新聞 2005年8月29日(月)夕刊


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